2025年8月25日、ブロックチェーン技術のカンファレンス「WebX2025」内で開催された結婚イベント「Crypto Wedding Ceremony」にて、当社「ビット婚姻」が採用され、婚姻意思をブロックチェーンに半永久的に刻み、延べ583名の参列者がスマートフォンを通じて電子的な「証人」となる、国内初(※1)のデジタル結婚イベントを成功させました。
婚姻は、両性の合意に基づいて成立します(日本国憲法第24条)。「ビット婚姻」は、この婚姻における本質的側面である意思の合意、また、互いが互いを愛することの相互の誓いを、最新技術を用いて永続的な形で記録するという着想から開発されました。伝統的かつ神聖な儀式である結婚式に、ブロックチェーンという先進技術を融合させることにより、「新しい結婚式のカタチ」を提案します。
婚姻は両性の合意に基づきますが、「ビット婚姻」では、牧師のような第三者によって「誓わされる」のではなく、互いが互いに「誓い合う」ことを、電子署名技術を使い、暗号学的に表現します。これにより、真の婚姻意思の証明を行えます。
署名された婚姻証明書は、世界中で使われているビットコインブロックチェーンに記録されます。これは、一度記録されると改ざんが事実上不可能である性質を持ち、長期にわたり記録が残り続けます。透明性も高く、ブロックチェーンにアクセスするだけで誰でも婚姻証明書の存在を証明できます。
参列者全員が「証人」として参加できる画期的な仕組み
従来の婚姻届では、証人2名以上をつけ、証人が責任をもって婚姻意思の確認をしますが、証人以外の者が確認することは究極的にはできません。
「ビット婚姻」は、「当事者でなくとも、複雑な手順を踏まなくても、この婚姻に納得してもらえる」ことを重視し、客観的な形で婚姻意思を記録し、さらにQRコードをスキャンするだけで誰でも意思を数学的に検証できる仕組みを構築しました。
ビットコインブロックチェーンの「記録」の側面だけでなく「決済」の側面も活かします。従来の結婚式ではご祝儀を現金で渡すことがマナーとされてきましたが、このイベントでは、原則として暗号資産でご祝儀を送付することとしました。さらに、ブロックチェーンの透明性を活かし、ご祝儀を送って頂いた方を特定し、返礼品としてNFTを送ることができます。NFTにイベントの思い出を記録し、ウォレットにコレクションすることができます。
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EVMでお送りいただいた皆様には順次、記念写真つきNFTをお送りいたします。
「ビット婚姻」は、結婚式の儀式中に、新郎新婦(証明者)と参列者(検証者)が一体となって誓いの記録を完成させるサービスです。
証人の参加: 参列者は、会場のスクリーンに表示されるQRコードを自身のスマートフォンで読み取り、結婚の「証人」として儀式に参加します。個人情報の入力は不要で、ニックネームの登録だけで気軽に参加できます。
誓いの電子署名: 新郎新婦は、それぞれのスマートフォン上で誓約文書を確認し、生体認証(指紋や顔認証)を用いて電子署名を行います。この署名は、新郎新婦それぞれのスマートフォンで安全に生成されます。
ブロックチェーンへの記録: 全員の署名が完了すると、管理者の操作によって誓いの証がビットコインブロックチェーンに送信されます。スクリーンには、記録がブロックチェーンに刻まれていく様子がリアルタイムで映し出され、会場全体で歴史的瞬間を共有できます。
記録の検証: 送信完了後、参列者は自身のスマートフォンで、誓いがブロックチェーンに確かに記録されたことを自ら検証し、確認することができます。
延べ583名の参列者にQRコードを読んでいただき、検証して頂きました。
本サービスは、3つの技術を組み合わせることで、誓いの永続性と信頼性を担保しています。
電子署名:確かに「本人」が誓ったことを証明
利用者のスマートフォンに搭載されている、指紋認証や顔認証といった生体認証と紐付いた強固なセキュリティ機能を活用して電子署名を行います。これにより、確かに本人自身の意思で誓いが行われたことを、暗号技術によって証明します。
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今回用いられた電子署名は、電子署名法第2条に準拠した暗号学的に安全な方式です。
証明書チェーン:二人の「相互の信頼」を技術的に表現
今回の式典では、新郎新婦が互いに電子証明書を発行し合う「証明書チェーン」の仕組みを導入。これにより、二人の誓いが一方的なものではなく、相互の信頼と承認に基づいていることを技術的にも証明し、より強固な結びつきを表現しました。
ブロックチェーンの「チェーン」とは異なります。Webサイトの暗号化などに使われる技術を応用しています。
ブロックチェーン:誓いが「永遠」に消えないことを保証
電子署名された婚姻証明書は、暗号化され、ビットコインブロックチェーンに送信されます。実はビットコインブロックチェーンは、ビットコインを送る以外の用途にも使え、今回のようなデータを半永久的に保持する用途にも使えます。
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預金通帳に金額ゼロ円の取引を追加するような要領で任意のデータを記録できます。
今回のWebX2025での成功を受け、「ビット婚姻」サービスの今後の可能性について、以下のような展開が期待されます。
事実婚は、婚姻届を提出していないが、夫婦として生計を共にしている関係のことを指しますが、婚姻届を提出しないことで客観的に婚姻意思を示せず、それを証明するために追加の書類作成等が必要になることがあります。「ビット婚姻」によって電子署名法に準拠した方式により婚姻意思を証明することにより、客観的な意思の証明の一助となる可能性が期待されます。
結婚式披露宴では、新郎新婦の生い立ちや、感謝の言葉などを動画にして上映することがありますが、「ビット婚姻」によって、参列者が操作可能なアプリ、またはNFTなどを使って、単にビデオを観るだけでなく、参列者参加型のよりエンゲージメントが高いアクティビティを提供することができます。
最新の暗号技術を取り入れたプライバシー向上と情報の信頼性の両立
最新の暗号技術の発展は著しく、データを一切非公開としながら、データがある数学的ルールに従っていて正しいことを検証できる「ゼロ知識証明」技術が急成長しています。これを用いることで、単にデータがある時点で存在していること(そのデータがでたらめでないことの保証はない)だけでなく、例えば、氏名や生年月日の形式が正しい、等、より綿密な検証ができると同時に、そのデータの中身は当事者以外に一切明かされないような証明を作成することができます。このような技術を取り入れ、よりプライバシーと利便性が向上することが期待されます。
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例えば、諸事情で婚姻の事実を肯定できないケースにおいて、非常に効果的です。
実は、ビット婚姻は2018年より、性行為の合意なども含めた合意作成ツールとして提供されています。近年、不同意性交の問題が議論される中で、客観的な意思確認の手法の重要性を感じています。本イベントの本質は、結婚イベントをカッコよく行ったというだけでなく、それに限らない「お互いの合意」を暗号学的に表現でき、それを関係者全員がわかりやすく実感できる形に落とし込んだところにあります。
今回は要件の都合上、先述のゼロ知識証明を取り入れることはできませんが、今後、より発展した技術を取り入れ、結婚に限らず社会における様々な約束事を支える、安心して使える合意形成ツールを作っていく所存です。
本記事は概要を説明するにとどめましたが、今後GitHubや本ブログにて要素技術や開発過程を深堀りする記事を公開する予定です。お楽しみに!
※1:自社調べ(2025年8月時点)。証明者自身の電子証明書で認証し、挙式中にトランザクションを送信するサービスとして。
このイベントは「結婚イベント」「新しい結婚式のカタチ」であり、古典結婚式と異なる場合がございます。
本サービスは、役所への婚姻届出(民法739条)に代わるものではありません。法的な婚姻の成立や戸籍の変更を保証するものではなく、当事者の合意と誓いを暗号技術で検証可能な形で記録・可視化するものです。
インターネット上で情報を安全に記録・管理するための技術。記録されたデータは、世界中のコンピューターが互いに監視し合うことで、後から誰にも改ざんすることが極めて困難になります。特定の管理者なしに、高い信頼性を保つことができるのが特徴です。主に資産の送金や交換に利用されます。
インターネットの世界における「住民票」「印鑑証明書」のような役割を持つ電子データ。信頼できる第三者機関(認証局)が発行し、持ち主の身元や、その人が使うデジタルの鍵が本物であることを証明します。電子署名と共に提示し、安全な通信や、なりすましでない張本人であることの確認が可能になります。
デジタル文書に対して行われる「印鑑」「手書きの署名」に相当するもの。電子証明書と共に提示し、「誰が署名したか(本人証明)」と「署名された後に内容が改ざんされていないか(非改ざん証明)」の2つを数学的に証明することができます。
暗号資産を管理することができるアプリケーション。利用者が保有する暗号資産(Fungible Tokens)やNFT(Non-Fungible Tokens)を一覧表示して管理できる機能を持ちます。
データの中身を一切明かすことなく、そのデータが正しいルールに従っていることを数学的に証明できる暗号技術。例えば、「私は20歳以上です」ということを、実際の年齢(25歳など)を相手に教えることなく証明できます。
従来の証明では「運転免許証を見せる=生年月日まで全て相手に知られる」必要がありましたが、ゼロ知識証明では「年齢条件を満たしている事実のみ」を証明し、その他の個人情報は完全に秘匿できます。
婚姻においては、氏名や住所などの詳細情報を第三者に一切明かすことなく、「正式な婚姻手続きが行われた」という事実だけを客観的に証明することが可能になります。プライバシー保護と信頼性確保を両立できる、次世代の証明技術として注目されています。